ピアノ奏法研究

〜ピアノの上達する奏法の解説と音楽について〜


サイト   トップ 奏法に  ついて 音楽に  ついて プロフィール 質問 リンク集




いままでは奏法の基礎を解説してきましたが、これからはより実践的な場面での奏法の解説をします。トリルやトレモロ、グリッサンドや跳躍などの技術的な奏法から、2音のスラー(音楽についての同項参照)などの具体的な弾き方まで、ピアノを演奏するうえで様々な場面で役にたつと思います。


トリルは隣接した2つの音(例えば
ドとレだったり♯ファとソだったりです)を交互に何度も弾いて、独特のころころした音を出すピアノの奏法のひとつです。
このトリルのコツは、指をパタパタさせないこと、鍵盤から指を離す時振り上げないこと、速く弾き過ぎないこと。そして、トリルという技術として捉えるのではなく、ドレドレドレというメロディーだと感じて弾くことも重要です。これからそれぞれ説明します。

<指をパタパタさせないこと、鍵盤から離す時振り上げないこと。指の一番動きやすい範囲で弾くこと>
これは指の負担を減らすための注意です。音が鳴るのに必要な力は鍵盤を押し下げる力だけです。鍵盤から指を離すだけのために一生懸命指を振り上げては、それだけ労力の無駄ですし、特にトリルでは連続で同じ指を上げ下げするので、”りきみ”にもつながります。では、どうすればいいか、
実は次の音を弾く時に、今まで弾いてた指の力をただ抜くだけで勝手に鍵盤から離れます。

<速く弾き過ぎないこと、トリルを技術でなくメロディーだと感じて弾くこと>
よくトリルはピアノ演奏の技術のようにとりあげられますが、技術であると思った瞬間にトリルだけ音楽からかけ離れてしまいます。短時間に沢山音が入らなくてもいいんです。音楽的なメロディーとして感じるだけで、トリルとしての難しさは一切なくなります。

また、指の組み合わせによっても難易度が異なります。曲の流れに差し支えなければ、なるべく特異な指の組み合わせに換えて弾くことも大切です。以下に、私が用いている指の組み合わせを難易度別に記しておきます。番号は親指を1として人差し指が2中指が3と順番に数える、ピアノでは一般的な指番号です。

 よく使う弾きやすい指の組み合わせ  比較的使いやすい指の組み合わせ  なるべくなら避けて他の指にに換えたい組み合わせ
1、3
2、3
1、2
2、5
2、4
3、5
1、4
3、4
4、5
 親指は他の4指と全く違う筋肉を使い独立して動くので1、3や1、2という組み合わせは大変有効です。特に1、3は私が最もよく使う組み合わせです。
2、3は隣どうしの指ですが、比較的独立して動くうえ手の重心が安定しやすい指で、トリル後に低い音にも高い音にも行けるので使いやすい組み合わせです。
この組み合わせは、離れた指どうしでのトリルです。指が離れていると、それぞれ意識して動かしやすいのでお勧めです。また、手首を軽く揺らして重心を移動させトリルの動きに参加させる事ができるので、使いやすい指です。

この組み合わせでのトリルは、大変難しいです。練習曲などでこの組み合わせの練習用に指番号が指定されてない限り極力避けることをお勧めします。
もともと3、4は神経と筋肉を共有してるために、鍛えたからといって誰でも独立するわけではありません。身体的な難しさで音楽を歪ませてしまうくらいなら他の綺麗にトリルが入る指の組み合わせで演奏しましょう。






トレモロはトリルの片方が2音以上離れていたり和音だったりする奏法です。オクターブでの太鼓の様なドコドコ音から、和音をしっかり弾いたジャカジャカ音、軽く弾けばフワフワ音などなど、表現の幅が広いので古典派から現代まで幅広く使われています。
トレモロのコツは、拍の頭の方が欲しい音で、裏拍の方はおまけ音だと認識することです。よくある間違いをする人は、ドコドコ音をドドドド、ジャカジャカ音はジャジャジャジャで弾こうとしてしまいます。表と裏をしっかり分けて弾きましょう。

下の楽譜で言うとドミソが欲しい音なので上から和音を押さえ、裏拍の高いドは力を抜いて手を上にあげて次のドミソを弾く準備をする時に、おまけで触る程度でいいのです。この時も下の軽く旋回運動を入れるとよいです。
 

   


もうひとつ重要なことが手の回内と回外の動きです。トレモロの時に手の中心を通る線を軸に手をドアノブを回すように回転させると安定しません。これは人間の体が、前腕の中にある骨2本のうち小指側の骨を軸に手が回るよう設計されているからです。この認識が間違えていると他の奏法の時にも悪影響が出てしまいますので、是非頭の中に入れといてください。
手は親指を軸に回したり中心を軸に回すと不安定になり、小指側を軸に回すと人体の構造的に理にかなった合理的な動きをすることができます。このへんはボディーマップという本に書いてありますが、具体的に奏法にどう活かすのか載ってなかったので是非伝えたかったことでした。

     
 親指側を軸にした回転は良くない 手の中心を通る線を軸にしても安定しない  小指を軸にした回転が理に適っている 



グリッサンドとは、指を鍵盤上で滑らせて一度に音階を駆けのぼったり駆け下りたりする奏法です。難しさの割に演奏効果が高い(ようするに簡単に「すごい!」って言ってもらえる)ので良く使われます。
様々な弾き方がありますが、駆けのぼりと駆け下りそれぞれ紹介します。

音階を 駆けのぼる場合  音階を駆け下りる場合
     

グリッサンドは出来るまで少々コツが必要ですが、一度出来るようになるととても簡単な奏法です。ポイントは
力で抑えつけないこと。鍵盤の底までしっかり押さえこんでいては次の鍵盤に滑りこめません。お風呂の水面を爪で軽く”なでる”くらいの気持ちで、軽やかに弾きましょう。



跳躍はオクターブ以上の広い音程を素早く移動する奏法上のテクニックです。鍵盤は横幅が2cm強で黒鍵も1cm弱ほどしかありませんので、曲によっては難しい技術のひとつですが、跳躍に対する考え方・捉え方や奏法を変えるだけでかなり安定して弾けるようになります。跳躍が出てきても少しでも楽に音楽的に演奏できるよう、跳躍の考え方と奏法、それぞれ解説します。


跳躍の捉え方のコツ

例えば楽譜のような跳躍、ラから10度高いドを弾く場合について考えてみます。普通に考えると、この跳躍は10度分の跳躍でとても遠い音程へ飛ぶような気がしてしまいますが、実はオクターブどうしの移動だと考えると手自体の移動は3度でですむのです。
下の楽譜にに10度の跳躍の距離感をつかむ練習の方法を記しています。

ラからドの10度の跳躍 
 
距離感を掴むには、まずオクターブのラ→ドというメロディーを弾いて、そこからひとずつ音を抜いていきます。  
 
この考え方で跳躍を捉えると、3オクターブにわたる跳躍でさえ
小指と親指の位置を入れ替えるだけで正確に掴むことが出来ます。
 
 



跳躍の奏法のコツ

リストのメフィトワルツNo.1のパッセージを例に、どの様な奏法が弾きやすいのか見てみましょう。このような連続する跳躍の場合、右にいったり左にいったりとても忙しい跳躍になり、とても難しいパッセージになります。この弾き方を3つ挙げてみました。
 

これはあきらかに誤った奏法の例です。この弾き方で素早い跳躍は無理です。 
 
この奏法は一般的な跳躍の仕方です半円を描くので外しにくいです。しかし、連続する跳躍においては
何度も逆への方向転換が求められ、コントロールが非常に難しくなります。
 
私が実践しおすすめしているのは次の奏法です。半円ではなく楕円運動によって
流れるような動きで演奏することができます。打鍵の際の腕の動きを殺さずに、
そのまま横移動にスムースにもっていきます。これは、この曲だけでなく様々な跳躍に応用できます。
 






オクターブの奏法

和音の連続

小さな音を出すためには

執筆中です








Copyright © 2011 kazuaki tsuji All rights reserved.

inserted by FC2 system