ピアノ奏法研究

〜ピアノの上達する奏法の解説と音楽について〜


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いよいよ指を1本づつ使って次々に音を出すという、より実践に近い形に入ります。
音階を弾いたりメロディーや単音でのパッセージなど、あらゆる場面で応用できる基礎として重要な部分です。
単音でのパッセージをスムースに行うには条件がいくつかあります。

 ・イメージ通りの音が発音されて、重心が鍵盤上で安定し手のアーチによって最小限の力で発音した指が鍵盤上で自立していること。
 ・他の指は力が完全に抜けいつでも動くことが可能で指を振り上げなくても掴む方向に曲げるだけで発音出来る位置で待機していること。

つまり、音を発音することと次の発音の準備が出来ていることが両立した状態を常に保っておくとスムースに演奏することができます。
私たちの指は5本とも長さも性能も全く異なります。それぞれの指について少し詳しくみていきましょう。



人差し指はピアノを弾くうえで一番使い勝手のよい指です。他の指とは完全に独立して動かすことができますし、関節が強く重心も安定しやすいです。音を出す分には特に難しいことはないと思います。あとは他の指の力を抜いて自然に鍵盤上に置いておくだけで次の発音につなげやすくなります。ほとんどの人は人差し指よりも中指の方が長いですから、中指は少し伸ばし気味に人差し指よりも少し奥の位置で待機しておくと次に指を降ろしやすいです。
注意べき点は、他の指でも当てはまりますが右の写真のように第1関節が曲がってアーチがつぶれてしまうことです。指を痛める原因になります。





中指の特徴はその長さと位置です。もとから真ん中に指があるので重心が最も安定しています。そして一番長い指なので、鍵盤を押し下げた状態でも他の指は伸ばさなくても自然なアーチの形で待機することができます。注意点は、その長さゆえに鍵盤の奥の方を弾かないと次の発音の時に腕を前に押し出さなければならなくなることです。黒鍵を含むパッセージの場合は始めから鍵盤の奥の方を打鍵点にしておくことをお勧めします。

この鍵盤のどの位置で打鍵するか考えることはピアノ演奏にとても重要なことです。初心者の方にありがちなことが、打鍵点を揃えてその位置に無理やり指を合わせる下の左の写真ような構えになることです。どうしても「白鍵ならこの場所で打鍵して黒鍵ならこの場所を押さえる」「音の粒を揃えるために押さえる鍵盤の位置を揃えよう」などと考えてしまいがちになりますが、かえって弾きづらく思うような演奏が出来なくなります。自分と鍵盤がなじむポジションを自分で探って、常に手が楽に音作りに集中できる有利な位置に打鍵点を置きましょう。特に一番長い中指は奥すぎるくらいの位置でちょうど良いと思います。






苦手な人が多いと思います薬指についてです。なぜピアノ演奏で薬指の扱いが難しいかというと、薬指だけを自由に動かす神経がなく、筋肉も他の指と同じ筋肉を共有している場合が多いため、薬指だけ振り上げたりアーチを作って自立したりといったことが解剖学上できなくなっているからです。ですので、まず自分の出来ること出来ないことを知り、出来ることを使って発音しアーチを作ることが必要になります。
まず薬指の先を曲げてみてください。薬指だけを動かせる人はかなり少ないのではないでしょうか。おそらく多くの人が小指の先まで丸まって中には中指も連動して曲がってしまう人もいると思います。これがなぜピアノ演奏に影響するかというと薬指を指の力で丸めて弾こうとすると小指もまるまってしまい、次に小指が発音できなくなってしまいます。それでも無理に小指を次に弾こうとすると、小指をまるめたまま振り上げた状態「薬指の演奏時に小指を立てる癖」がついてしまいます。これではスムースな演奏は出来ません。


下の写真のように薬指は、根元から曲げる毛様筋という筋肉だけはある程度他の指から独立して動かすことが出来ます。薬指の力だけで腕の重さを支えたりすることは普段の私たちの生活ではありえない行為ですので、体得にはそれなりの訓練が必要です。
しかし、もともと指の力での力強いタッチができる指ではありませんので、無理に振り上げたり勢いをつけて鍵盤に叩きつけたりしないで下さい。薬指だけを根元から高々と上げることも解剖学上ありえない動きですので、よっぽど特殊な人以外は出来ません。シューマンは薬指を糸で釣り上げたまま練習したり解剖学的に無理なことをしたせいで指を壊してピアニストとしての夢を断念してしまったそうです。自分の体の設計に逆らわずに自然に演奏できる方法を見つけましょう。薬指が他の指より多少不自由でもたいていの曲は満足に弾けます。






小指は人によって変な癖がついたりしやすい注意が必要な指です。実は下の写真を比べると分かるように、小指の付け根の関節は手に固定されているわけではなくグラグラとして他の指より安定しません。



今まで、右の写真でいえば青い丸で示したそれぞれの指の関節の、下から二番目の場所(指が手のひらから生えてるように見える場所)を「指の付け根」と言ってきました。
しかし、レントゲン写真などを見れば分かるように、手のひらの中ではすでに指は骨が別々に分離していて、ただ筋肉や腱、皮膚が繋がっているだけなのです。ですから指の骨が枝分かれして生えているのは写真でいう一番下の丸の部分です。
他の指は筋肉や腱、皮膚などによってある程度固定されているのですが、小指の第一関節は特にぐらつきやすく骨が根元から動きやすくなっています。小指でアーチを作る際は注意が必要です。



ですので下の写真のように小指の第一関節がへこんでしまっていると、アーチが崩れているので腕の重さを伝えられず第一関節を痛める原因になります。




生まれつき小指の第一関節がへこみやすい手を持った方が結構います。そういった場合は次の練習方法をお勧めします。下の左の写真を見てください。小指の第一関節を手のひら側から押しこんで関節を出しています。この第一関節をぼこっと出した状態で小指を第一関節から曲げたり伸ばしたりして癖付けをします。効果が現れるまでは個人差がありますが、必ず誰でもアーチが作れるようになります。
小指は他の人差し指、中指、薬指にはない「小指球筋」という小指を横に広げる筋肉を持っています。アーチの構造を支えるにはこの筋肉を使います。ピアノ演奏特有の筋肉で、小指の力だけで腕の重さを支えられるようになるころには、この筋肉がかなり発達すると思います。





親指は五指中で最も複雑な構造を持つ指です。他の指から完全に独立しているのはもちろん、他の指より関節が1つ少なく、親指だけを特有の筋肉が複数あります。まずは親指がどんなことが出来るのか見てみましょう。
ピアノ演奏では基本的に親指は伸ばしたまま根元から動かします。その動きは主に以下の3種類です。これらの動きは組み合わせて親指を自由に動かすことが可能です。特に右の写真の動きは普段の生活では使わないピアノ特有の動きなので慣れるまである程度訓練が必要です。
親指を固めたまま手首ごと動かして打鍵する奏法もありますが、音階や単音の速いパッセージをこの奏法で弾くと親指の音だけ音が飛び出たり、他の指に重心が移動出来なくなり速いパッセージが弾づらくなります。親指自身も積極的に動かして演奏しましょう。

     


親指の打鍵前                    打鍵後


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